Act.14 「高血圧と降圧剤」定例勉強会 2016.10.24 ①
再びこんばんは。竹内です。
今回で19回目を迎えたスカイプ勉強会、発表者は竹内・杉浦でした。
これからのブログ記事に関してですが、発表者自身が自分の発表内容をまとめたものをブログに掲載するという形にしていきます!
なので前回までと比べると内容をより詳しくお伝えできるかと思います。
それでは、宜しくお願いします。
私は「高血圧と降圧剤」というタイトルで発表しました。
⑴循環器総論
生理学の簡単な復習から。
心臓は割愛します。
腎臓に関しては、血圧の調整機構について厚めに。
腎臓による血圧調整機構は2つあります。
1つめは、、
塩分・水分濃度の調整です。
→浸透圧によって体液量を調整し、血圧を上下させる機構です。
2つめは、、
RASS(レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系)、
つまりホルモンによる調節です。
順序をまとめると、この通り。
1:アンジオテンシンがレニンによってアンジオテンシンⅠになる
↓
2:アンジオテンシンⅠがACEによってⅡになる
↓
3:アンジオテンシンⅡそのものによる血圧上昇+
アンジオテンシンⅡは副腎皮質からアルドステロンを発生させる
アルドステロンは尿細管でのNa再吸収を増加させ、体液量を増加→血圧上昇
以下、用語解説。
※アンジオテンシノーゲン
肝臓や肥大化した脂肪細胞から産生。
レニン
腎臓の傍糸球体細胞から産生。タンパク質分解酵素
アンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンIに。
アンジオテンシン変換酵素(ACE)
細胞膜上や精巣から産生。
アンジオテンシンⅠをⅡに。
腎臓による血圧調整と一口に言っても、このように二つの別の機構が働いて調整が行われています。
⑵血圧変化のメカニズム
まず血圧は、「血管壁に与える血液の圧力」のことであり、上記のように心拍出量×末梢血管抵抗で表されます。
また、この二つは種々の要因によって上下します。
ここでの交感神経の活性化は副腎皮質からのカテコールアミン(アドレナリン・ノルアドレナリン)分泌に繋がることもあり、
このカテコールアミン自体が心拍出量・末梢血管抵抗を上げるとともに、
腎臓からのレニン分泌を促し、血圧上昇に寄与します。
また、この図のように血圧調整に関わるホルモンは多器官から分泌され、それぞれの役割を果たしています。
この表のように、血圧変化の反応はそれぞれの調節系が働く時間が違います。
例えば受容器の反射による血圧の調整は瞬間的ですが、腎臓の体液量調節やRAAS、抗利尿ホルモン(下垂体後葉から分泌)は数時間単位かけて血圧の調整をする形となっています。
⑶高血圧
ここでは高血圧を五つの項目に分けて紹介しました。
①疫学
まずは男女別・年齢別の血圧分布から。
高血圧と言っても本態性と二次的なものがあって、ほとんどが本態性です。
また、安静時血圧から分類がなされています。
☝️そこで質問です。なぜ、高血圧がいけないのでしょうか。
、、、それは、合併症があるからですよね。(当たり前か)
★高血圧の主な合併症
○腎障害(腎硬化症・CKDなど)
○糖尿病
これらのリスクが上がるといわれています。どれも命に関わるところですよね。
改善のためには生活習慣を正すことはもちろんですが、
多くの場合医師の処方のもと「降圧剤」が使われることになります。
降圧剤は大きく分けても片手では収まらないほど種類があり、日々新薬も出されています。
この中でも十分な降圧効果、エビデンスを有し、主に用いられる5種類
Ca拮抗薬・利尿薬・ARB・ACE阻害薬・β遮断薬は「主要降圧薬」と呼ばれており、この中でβ遮断薬をのぞいた4つは「第一選択薬」とされています。
当たり前ですが降圧剤それぞれには特徴があり、それぞれ適する患者の傾向であったり、疾患が存在します。
その他情報は以下にそれぞれ詳しく解説しました。
※作用機序が似たARB・ACE阻害薬、β・α遮断薬はそれぞれまとめて説明しています。
①Ca拮抗薬
・各種降圧薬の中で降圧効果が最も強力、かつ副作用が少ない。
→幅広い症例で第一選択薬として用いられ、合併症の有無に関わらず他の降圧薬と併用しやすい。
・血管拡張作用がある為、高齢者にも適する。
・糖・脂質・電解質代謝に悪影響を与えず、糖尿病や脂質異常症を有する症例にも有用といわれる。
・脳や腎臓などの臓器血流改善効果があり、脳卒中や腎臓病があっても有用。
・狭心症の既往のある患者に適している(元々狭心症のために開発されたそう)。
[副作用]
動悸、頭痛、ほてり感、
浮腫、歯肉肥厚、便秘など
[作用機序]
そもそも、筋肉の収縮には筋小胞体へのカルシウムイオン流入が必要です。
Ca拮抗薬は、血管平滑筋においてその流入を阻害することで、血管平滑筋の収縮を弱め、末梢血管抵抗を減少させます。名前そのままですね。
Ca拮抗薬は主にジヒドロピリジン系が用いられており、これらは末梢血管に作用し血管を拡張。心臓に対してはほぼ作用しない”血管選択性”を有しています。
また、長時間作用型(1~2回/日)と短時間作用型(3回/日)に分かれます。短時間作用型の方が副作用が急激に見られるリスクがあるなどの面から長時間作用型が主に用いられています。
②利尿薬
・腎臓の機能単位であるネフロンの尿細管や集合管に作用し、体内のNaと水分の排泄を促進し、体液量(血液量)を減らすことで降圧する仕組み。
・夜の服用は利尿が睡眠の妨げになるため、1日1回朝に服用するケースがほとんど。
・用量調節が重要であり、過剰投与による副作用や長期予後を考慮し、他の降圧薬に少量併用投与することが望ましいとされている。
1)サイアザイド系利尿薬
・遠位尿細管でのNa+/Cl-共輸送体を阻害し、Na+再吸収を抑制。
・遠位尿細管でのNa+-Ca2+交換が阻害されるため、Ca2+の保持に働く。
・利尿薬の中では強い降圧効果。
・低カリウム血症や糖、脂質、尿酸の代謝に注意が必要。腎機能低下時の効果は乏しい。
(2)ループ利尿薬
・ヘンレ係蹄上行脚のNa+/K+/2Cl-共輸送体を阻害し、Na+とK+の再吸収を抑制。
これに伴い、尿細管細胞間を通してCa2+とMg2+の再吸収も抑制される。
・腎血流量や糸球体濾過率の減少に影響を与えないため、腎障害がある高血圧患者に使用可能。
⑶カリウム保持性利尿薬・アルドステロン拮抗薬
・いずれもK+排泄への影響を与えずにNa+排泄が可能→低カリウム血症の心配なし。
降圧作用は3種のうち最も弱い。
<カリウム保持性利尿薬(トリアムテレン)>
遠位尿細管、集合管のNaチャネルを抑制し、Na+再吸収を促進、K+の排泄を抑制する。
<アルドステロン拮抗薬(スピロノラクトン、エプレレノン)>
アルドステロン受容体を阻害し、Na+排泄を促進。また、結果としてK+の排泄を減少させる。
(アルドステロンはアルドステロン受容体と結合し、Na+の再吸収を促進)
[副作用]
<サイアザイド系利尿薬>
低K血症・低Mg血症、耐糖能低下、高尿酸血症など
<ループ利尿薬>
サイアザイド系利尿薬と同じ副作用+脱水、膵炎、発疹など
③ARB/ACE阻害薬
◉アンジオテンシンⅡの受容体(特にAT1受容体)を直接阻害し昇圧系を抑制
<ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)>
◉レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(昇圧系)を阻害
◉カリクレイン-キニン-プロスタグランジン系(降圧系)を促進
・軽症高血圧患者に適する。
ACE阻害薬の一部で、腎臓や心臓、血管、脳などの臓器保護作用が認められている
→糖尿病、蛋白尿、心不全、心筋梗塞の既往、脳循環不全などを有する患者に適する。
・降圧効果はARB≧ACE阻害薬
さらにARBの方が副作用はより少ない。日本ではARBはCa拮抗薬に次いで使用されている。
・インスリン感受性の改善効果もある(ARB≦ACE阻害薬)
・ARBは利尿薬やCa拮抗薬と併用される場合が多いことから、配合剤が発売されている。
ARB↓
ACE↓
ARBの配合剤↓
・配合剤は初期投与では過度降圧のおそれがある。
単剤あるいは2剤併用から開始し、用量を固定したうえで配合剤へ切り替える
(高血圧治療ガイドライン2014で推奨)保険適応上、第一選択薬とはなっていない。
④β遮断薬、α遮断薬、αβ遮断薬
心臓や血管の収縮に関わる交感神経への作用を遮断して降圧する
β遮断薬
・心臓の動きが活発な若中年者、頻脈傾向、虚血性心疾患等、
心臓を興奮させてはいけない人にも向く
α遮断薬
・前立腺肥大症に伴う排尿障害のある患者に有用
(α1受容体が前立腺に多く分布している為)
・糖や脂質の代謝を改善する為、糖尿病・脂質異常症にも有用
αβ遮断薬
・糖・脂質代謝への悪影響を与えにくい。若年、中高年、褐色細胞腫にも有用
その他にも色々ありますので、一覧だけ載せておきます。
●中枢性交感神経抑制薬(中枢性α2アゴニスト)
●血管拡張薬
●直接レニン阻害薬
●末梢性交換感神経抑制薬(ラウオルフィア剤)
●循環改善薬
詳しくは説明しませんが、多くの場合が名前そのままです。笑
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「高血圧」と「降圧剤」についてお話しさせていただきました。
高血圧はもちろん良くないことですが、単純に「血圧が高いから良くない」ではなくて、
高血圧が本質的には何を意味しているのかを知ることも一つかと思います。
降圧剤に関しても、各作用機序だったり、薬剤の名前をパッとみて、大きなくくりではどの種類なのかくらいは知っておいてもいいかと。医師による降圧剤選択の意図なんかもわかるようになるかもしれません。
ちょっと自分でも一回の発表にしては情報量が多かったとは思いますが、発表含めてやりきりました。
”当たり前”のその中身にも興味を持ってみることも、面白い。
そう常日頃感じていますが、今回まとめて、発表するといったことを通してまさにそれを感じられたと思います。
最後まで見ていただき、ありがとうございます。
文責:竹内理人